Sunday, 9 February 2014

ESDの優先順位

Education for Sustainable Developmentとのことですが、前回のエントリーでは(英文ですが)UNESCOのトップページにあるビデオ映像の内容について少し批判的なことを書きました。要は、ESDのビデオで謳われている理念は良いですし、問題意識も良いのですが、「具体的な活動」となった途端に少しがっくりくる内容となってしまう、という批判でした。「自分たちにできるエネルギー節約」とか、「食べものは残さずに食べましょう」とか... あまりにも抽象的です。そして、「私たちにできること」を一方的に消費者の視点からしか考えていないようにもみえました。

実際には生産者の方が遥かにエネルギー消費も多いので、本当に「具体的」な活動をするならば、企業の生産活動をうまく規制するための法律を作るとか、企業の一員として働く人がそれぞれどう自分の会社へアプローチをかけてゆけば良いのかとか... むしろこちらを学校教育でも強調してくれたら良いのになあ、と思ってしまいました。UNESCOの動画をつくっている人がこのブログを読んでいる可能性はほぼゼロですが。

さて、この文脈で、今回はさらに、ESDを実践するときに優先すべきことを考えてみました。エネルギー消費量等を考慮に入れたとき、優先順位は以下の通りになりました。

  1. 生活必需品の生産・分配
  2. 製品製造に必要なモノの生産・分配
  3. 嗜好品の生産・分配
  4. 消費
すでに述べたように、UNESCOのビデオを見る限り、ESDは4番の「消費」についてのアプローチに偏りすぎていて、これよりも重要度の高い事項に言及できていません。

まず、生活必需品(衣食住)の生産と分配ですが、これは特に農業・土木業・林業及び各工場について調べてまとめるところから始めるべきでしょう。有機農業のJAS認定のように、「サステナビリティ認定」をつくって、これを満たさない生産者にはペナルティをつける。その具体的なペナルティの内容を考えたり、それを法律として書き起こす作業が大変ですが、数年以内にできることではあると思います。こうすれば、ほとんどの大手企業が事業を見直すことになると思うんですけどねえ...

次に、(ちょっと長たらしいですが)「製品製造に必要なモノ」というのは、例えば携帯電話やパソコン、工場の設備等を指します。「携帯・パソコンがないと就職できない」のが今の社会なのだとすれば、こうした機器も立派な「製品製造に必要なモノ」です。こちらも、生活必需品の場合と同じように、認定制度をつくって法律にすれば良いです。ただ、例えば電子機器業界では、どれだけコンゴの採掘場で採れた原料を使っているのかを各企業がなかなか公表しません。消費者市場に出てこないモノに対してもサステナビリティ認定を徹底するのはなかなか難しい。これが恐らく一番の課題でしょう。

三番目に、嗜好品の生産・分配です。これも馬鹿にできません。例えば、コーヒーやチョコレートはフェアトレードで有名になっていますが、フェアトレードという制度自体、特にアメリカやカナダでは形骸化しています。そもそも何が「フェア」なのかがよくわかっていない生産者も多い。南の農家にまず教えたいのは「フェアな賃金や労働環境」の要求の仕方ですね。これも、ESD関係者が取り組むべきことでしょう。

消費は上記の課題をクリアした上で、「できれば」という程度のものです。レジ袋を使わないとか節電をするとか車ではなく自転車に乗るとかいった「運動」は、実際には焼け石に水です。海外旅行に行くのを自粛する、なんていうことの方が良いですが、それでもモノの輸出入や仕事の海外出張・学生の海外留学なんかが加速しているので、正直これもあまり効果的ではないでしょう。エコ・ツーリズムも、あまり海外旅行に興味がなかった人を巻き込むとしたらやはり逆効果ですね。消費というのは一方をうまく処理すると他方で新たな問題が起きることが多いので、トリッキーです。エネルギー問題にしても、やはり、生産者側の取り組みが鍵になるはずだと思います。 例えば、消費の段階では石油よりも太陽光の方が「クリーン」ですが、生産者からすると後者のほうが有害です。ソーラーパネルの生産・メンテナンス・廃棄が自然環境に与える影響は大きいです。

というわけで、以上の優先順位で、ESDの教育現場(特にUNESCOスクール)では生徒に必要な知識を伝えるべきでしょう。