「発信過剰」だといわれる昨今、自分の近況をブログにわざわざ書くのも時間の無駄だし、後で読み返してもあまり面白くないだろうと思いつつ、でも息抜きに今日は日記でも書こうかなと(別のことをしながら)思っていましたが、しかしいざ日記の内容を(別のことをしながら)考えているうちに、始めは普通に最近の自分に起きた出来事が頭の中を一通り巡ったのですが、そのうち話は勝手にどんどん概念的になっていってしまい、気がついたら「健全なナルシシズム」というテーマが精神の中に固定され、それ以外のことは逆にそこから派生したいといわんばかりにいったんはどこかへ行ってしまいました。
ナルシシズムというと、「これをするのが好き」と、自分のしていることを好くタイプと、「これをしている自分が好き」という、自分からみた自分の姿を好くタイプと、「これをしている自分が他の人からこうみられているかと思うと気分が良い」という、他人からみた自分を好くタイプと、私は三つ思いつきます。 この中で、特に十代の学生さんたちの中には、三番目のタイプのナルシストが多いようです。「ウケねらい」で何かをするかわいいタイプから、「おれは○○になる!」と決断して全てを投げ打って結局虚栄心を満たすだけの深刻なタイプまで。
進路を決めるときに、将来他人からどう思われたいか、を最優先にして決めるのは良くない。良くないとわかっていても、しかしそうした虚栄心を排除するのはなかなか難しいみたいです。「自分のしていることが好き」と思える進路が一番です。それも、単に気分的に「好き」なのではなく、色々な面から考えた上で、合理的に「好き」といえるような道を選ぶべきです。面白いのは、こういう道を選ぶ人は、他人からのひんしゅくを買いやすいということ。だから、そういったひんしゅくを無視する強さも必要です。
...というようなことを伝えたい相手が、実は最近いるんですよねえ。しかし、言葉で説明しても、どこまでわかってくれるか... それに、そもそもその人は、健全なナルシストかもしれないのですけど。それならば、余計なお世話となりますね。
さて、近況ですが(結局書く)、仕事が格段に増えました。とっても忙しいです。家庭教師と、塾の講師と、翻訳とを掛け持ちです。収入も2倍くらいになったのでありがたいのですが、しかし本当に今自分がやるべきこと、哲学や科学の研究が、なかなか落ち着いてできない...と思いきや、不思議と忙しいときの方がはかどるんですね。
切羽詰ってくると、時間が貴重に思えてきて、だらだらと本も読めないし、翻訳も(もうそろそろ出版できそうなところまできた!)ピシッと決めたくなって、バンバン筆が進みます。なかなか理解できずにいた「量子物理学」の基礎がようやく最近掴めてきたし、数学の「群論」も(まだ定義だけだけど)わかり始めてきました。そして、やっぱりヘーゲルはすごい。『自然哲学』を読んでいますが、ニュートンがぼろくそに批判されている。しかも、現代の量子物理学でも使われている概念や前提がすでにこの作品の中で批判されていたりする。原子の構造が太陽系のそれと酷似しているということすらわかっていなかった当時、「太陽系の構造は自然の全ての現象の基礎である」とヘーゲルは書いているし、電子が粒子か波かを議論している当時の科学者たちも、「そんな議論はくだらない」と一蹴。やばいですね。そして、「いつの日か、自然科学が哲学概念の力を必要とするときがきっとくる」と何度も繰りかえしつつ、「今はまだ科学が進んでいないので、結論の出せないことが多い」とあっさり認めるあたりも軽快。
さて、しかし結論が出ていてもそれを無視している場合が多いのが現代人(私も含む)ではないか、とも思える。例えば(やっぱりこれが一番ヘビーですが) 原発。数十年単位で考えたら、日本に、特に関東・東海地方に住んでいるのはどう考えても危険。だから、私は海外移住をなるべく早く実現させたくて色々と手をうっているのですが... 原発の不安や移住について近所の人たちに話してみると、「あ、僕も日本はやばいと思ってるんだ。僕は○○○に行きたいと思ってるよ」と言う人もいれば、「そんなことを怖がっていること自体が怖い」と批判する人も。ヨーロッパのPrecautionary Principleと、アメリカのRisk Assessmentの違いみたいですね。私はヨーロッパ派ですが... 一回起きたら終了な原発事故なので、リスク・アセスメントみたいな中道はちょっと楽観的過ぎると思いますね。
あと、今日久しぶりに『ソトコト』の「憂国呆談」をオンラインで読みましたが、改めて、浅田彰・田中康夫両氏は偉いなあと思いましたね。加齢に伴って守りの姿勢に入る、っていうような感じが一切なくて、時事問題をうまく歴史的な事象と組み合わせて考察してくれています。こういう手つき、ヘーゲルのそれにとても近い。とはいえ、日本の批評界には、このお二人の後続がないという感じがしますね。早く誰か出てこないかなあと思いました。