浜岡原子力発電所は、現在運転停止中の原子力発電所だ。将来、再稼動される可能性もあり、また燃料が発電所に保管されている可能性もある。そんな浜岡原発は、静岡県御前崎市にある。
静岡県御前崎市は、内閣府が南海トラフ大地震の際に「津波避難対策特別強化地域指定市町村」に指定している(ここを参照)。どういうことかというと、御前崎市は、「陸上において津波により30cm以上の浸水が地震発生から30分以内に生じる地域」であるとされているのだ(ここを参照)。さらにまた、御前崎市は「防災対策推進地域指定市町村」にも指定されている。こちらによれば、御前崎市は「震度6弱以上」の揺れが来ることが予想され、「大津波(3m以上)が予想され」るが「この水位よりも高い海岸堤防がない地域」だということになっている。
浜岡原発が果たして震度6弱以上の揺れと3m以上の津波を受けても事故を起こさないのかどうか、専門家ではない私にはわからない。少なくとも、福島第一原発の十年後に3号機は着工されており、4号機と5号機はさらにその後での着工なので、耐震性などは福島よりも浜岡が勝る可能性は高い。それ以上のことはいえないが、100%安心とは言い難い。何よりも不安なのは、津波が来たときに、現場の作業員は現場に残って冷静に作業をすることができるのかという点。とっさの事態に作業員が対応できなければ、事故に至る可能性は高い。対応できれば、事故は回避できるだろう。
事故が起きるか起きないかを事前に判断できず、しかし起きる可能性が極端に低いわけではないと思えるときは、「事故は起きる」という前提で考えるのが良い気がする。もし事故が起きた場合、被害はどのくらいになるのか。原発事故の可能性と並んで、被ばくによる人体への影響も、科学的に不透明な部分が大きい。
長い目でみると、やはりこうした大地震が来ることがわかっていながら、日本で、特に太平洋側で家族を育てることは、なかなかやりにくい。ただでさえ、南海トラフ大地震の想定される被害は大きい。内閣府は、「33万2千人」の死者を「8割減」、「250万棟」の全壊棟数を「5割減」することを、10年後までの「減災目標」として掲げている(ここを参照)。つまり、どんなに減災がうまくいっても、死者6万人、125万棟全壊という事態は十分考えられるということだ。ちなみに、東日本大震災の場合は、死者・行方不明者数1万8千人以上、全壊・半壊棟数40万棟以上となっている(2014年9月11日付けの警察庁広報資料より)。これを大きく上回る被害が、南海トラフ地震では想定されているわけだ。
地震や津波、原発事故などは、実際に起きてみないとその被害の凄まじさを実感することができない。そして、実感ができない被害に対しては、特に対策をとらないのが、人間の心理だろう。しかし、こうした資料を読むと、南海トラフ地震が起きたときに、一体どうなるのか、具体的に想像をすることができる。自分の住んでいる家が全壊あるいは半壊し、それによって家族の一部または全員が重傷を負ったり死亡したりする可能性がある。原発事故によって水や食料、大気の放射能汚染が起こり、それの影響を自分の子どもたちが受ける可能性もある。また、こうした一時の災難が過ぎ去ったあとは、深いトラウマと貧困状態に耐える一方、復興の作業を他方では開始しなければならなくなる。こうしたことを考えてみると、日本の、特に太平洋側の地域で家族を養うという選択は、あまり褒められたものではないと思えてしまう。
もちろん、他の地域や国に定住しても、あらゆるリスクを回避できるわけではない。しかし、少なくとも、今回想定されている南海トラフ地震の規模の被害は十分回避できる。黒か白かで考えるよりも、より被害の少ない場所を選んで定住するのが賢明だと思う。どうせ苦労するならば、なるべく苦労の少ない道を選びたい。